モノローグ天井桟敷

ショートでは悲劇ロングでは喜劇    本当はみんなコメディ

寝床の同床異夢

今日のタイトルで少し迷った。

最初に考えたのが「官落ちの平兵衛」。
九官鳥の「官」と完全の「完」を掛けたのだが、
それでは物足りなくなったのだ。

「瀬をはやみ」で、師匠から逃げた長男は立ち上がり、
逃げられた末っ子は落ちる。
落語にオチはつきものだが、四草の落ち方は鮮やかだった。
しかし、四草の場合は完落ちでも半落ちでもなく、
4分の1落ちのようにみえる。スタンスはいつも斜め。

自分についてはせこい算段だが、好意を持つ者には大胆な算段。
毒と甘さを兼ね備えたキャラは捉えようのない不思議な魅力がある。
本領発揮はこれから。

一方、草原=桂吉弥の演技は本職ではないかと思うほど上手い。
電話を草若が受けたときの無言の表情・・・
草原には家族の支えがある。それが他の3人にはない宝物。
「草原の輝き」はであり、に揺れるのだ。

今週の草々で一番印象的なのは、店の椅子の上で一人寝るシーン。
これは、後のあるシーンに重なっていく。
そして、墓前で草原と四草を力いっぱい抱きしめる本来の姿との対比。
この辺の強弱、明と暗を使い分けるみごとな演出。

もう一人の弟子で実の息子の小草若は仲間はずれ?
第6週のラストは寝床での同床異夢で終わる。
思っていることが食い違い、すれ違ったまま。
拓郎のように「人間なんて」
ららーらーららららーらー・・・
と時間だけが過ぎていくのか。

しかし、ドラマには時間の限りがあるのだ。(笑)
翌週へのつなぎ方が巧みで、きれいにオーバーーラップしていく。
きれいすぎるという贅沢な不満が出てくるかも。

今週は盛りたくさんでMPVの選考に困りそうだが、
本当は最初から決まっていた。ずばり、草若師匠。

師匠なくして弟子はなく、キヨミの落語との出会いもなかった。
キヨミが小浜に帰ろうと思ったとき、「ここにいれば一人ではない」
といった草若は、今、一人ぼっち(と思い込んでいる)。
たとえると「蝉の抜け殻」状態・・・
そんな腑抜け感がどこまでも漂う演技に文句なし。

神噛み賞は、草原。「とぞ思う」の繰り返しは「魂のルフラン」。
平兵衛賞は、京本政樹と四草。「女殺し」で共通。(笑)
助演左手賞は、鏡に弟子の名前を書いた磯七。箸も左手。

ベストスナイパー賞は、四草を一撃で仕留めた九官鳥。
知れたる伏線賞は、器用なハンドミキサー。まだまだ使える。
知られざる伏線賞は、落語劇「崇徳院」の中の「高津の富」看板。
高津の富はずっと後だが、お忘れなく。

まだありそうだが、とても書ききれない。休もう。

それでは、また。


 

押す視線 引く視線

四草の登場でツイッターが賑わっている。
その道中の陽気なこと。(笑)

小草若が押すような視線であるのに対して
四草は引くような視線。
熱い視線が四草に注がれるのは無理もないかな?

この二人から目が離せないが、第6週の最重要人物は
草若師匠である。注目は、やはり目。

草若の目は空ろだ。いったい何を見て何を感じているのか。
「め」をキーワードにざっと並べてみた。

「男やもめ」「駄目」「落ち目」「あきらめ」
「風呂のぬるめ」・・・酒の燗もぬるめ?

「出鱈目」はちょっと違う。熊さんが納得するほど
言うことに一応筋は通っている。

あれこれ探して辿り着いたのが「ゆめ」。
黒澤映画に「夢」というオムニバス作品がある。
幼年期、壮年期の回想、未来の悲惨や理想郷が
淡々と綴られている。

しかし、今の草若にはそんな夢を見る力さえない。
泥酔し草々を突き放し、墓前で後ろを振り返っても
小草若に声をかけないで立ち去ってしまう。
妻の下に早くいきたいとだけ願っているのだろうか。

弟子たちを魅了し稽古を付け、やさしい眼差しを
投げかけてくれた師匠の姿は何処へ消えたのか。

そんな時、5年前の落語会シーンが蘇ってくる。
脚本、演出、演技、編集すべて完璧。余韻がたまらない。

ツイッターでは「空目」という言葉を時々目にする。
空耳=幻聴で、空目=幻視ということらしい。
草若の場合、「空心」という言葉がぴったりしそうだ。
空心は心を見失いさ迷う状態→「カーネーション」の勘助

ところで、草若は妻の墓前に「かすみ草」を捧げた。
タンポポではない。
小草若はそれを除けて自分のバケツに放り込んでしまった。
その後、小草若はどうしたのだろう。
それについては何も触れられていないが、
来週のクライマックスを見てから想像すると面白いかも。

かすみ草の白さは、鏡に消えた弟子たちの文字を連想させ
はかなさを感じる。
しかし、それは希望の残り火でもある。
かすみ草の花言葉は「夢心地」。
草若にはやり残した夢があるはず。

おっと。もう一人、大事な目を忘れていた。
算段の平兵衛=京本政樹の流し目。

それでは、また。

鏡の中

第31回の、鏡にシェービングクリーム。一体誰が考えたんだろう。
商売道具を大切にする本職ではありえない。候補は

1.脚本の指定
2.演出
3.磯七=松尾貴史のアドリブ→準備できない

ということで、1か2、1と2の合作、いずれかだと思っていた。
しかし、「あまちゃん」を経た現時点で考えると、
演出の井上剛さんだろうと推測している。

鏡による映像の妙は古くからある。白黒映画で思いつくのは、
市民ケーン」、「イブの総て」、「オルフェ」など。
最近の日本のドラマでも、「woman」では田中裕子の場面で
ガラス戸の反射が何度も使われていた。

しかし、今回よく見ると、おかしなことに気がついた。
正面から撮った鏡にカメラが映っていない。ホラーか。
この凝った手法(しかもロケ)をしたのにはわけがあるはず。

たぶん、キヨミにとって3度目の異世界進入になるのだ。
(草々の鏡もシンクロしている)

1度目は、車でトンネルを潜り抜け小浜に至り、
おじいちゃんと落語に出会う第1週。
2度目は、大阪に出てきて、天満宮を経て
草若邸にたどり着く第3週。

鏡の向こう側は異世界。
「アリス」の世界や「ジブリ」の世界に似ている。
しかし、キヨミには真っ直ぐに通り抜けることができない。
過去をそのまま取り戻すこともできない。

キヨミにできるのは「逆回転」ではなく、
らせんを「順回転」させること。

落語劇「崇徳院」の「熊はん」は現代の路上にワープ。
握り飯とわらじが妙にリアル。見つけるしか道はない。
落語と現実の境界が消え、どうにも後戻りできない。

もうキヨミは異世界の中にどっぷりはまっている。
(そこは可笑しくて楽しい世界)

仲間や同志が集まる展開は、いつでもワクワクする。
三国志」「水滸伝」「七人の侍」「ワンピース」「ドラクエ」・・・?

それでは、また。

ジャンピングボード

キヨミの里帰りは、明日への大切なステップだった。
キヨミにとっても草々にとっても・・・
いや、もっと多くの人に波紋が及ぶようなエピが
いくつも散りばめられている。

失恋のドラマ痛みを癒そうと逃げてきた和田家は、
そんな状況ではないほど経済状態の悪化で険悪な雰囲気。
何とかしようとして打った手立ての第一弾が「五木ひろし」。

ホラだと相手にされないので、第二段は小草若の落語。
この落語「寿限無」がすごい。
ドラマでは、小草若の落語はヘタという設定だが、
小草若=茂山宗彦は上手い。たぶん、師匠よりも。(笑)

寿限無」が後の展開で利いてくる。
これは、伏線というよりもメインテーマの一つに・・・
詳しくは、別の機会で。

小草若は友春と同じくアホボンということで
ヘアースタイルから服装、赤い車までシンクロ。

その小草若が落語を演じた時に強調されていたのが
キランキランの腕時計と目線。
腕時計はバブルの象徴。「底抜け」がギャクですまなくなる時が
来るのを暗示しているかのようだ。
もう一つの目線は、人からの評価を気にする心の動きそのもの。

以前、只者ではない人物と書いたのは、小草若=茂山宗彦のこと。
これも書き始めると長くなりそうなので後日に。

落語バカの血が沸き立った草々が小草若に対抗して
「次の御用日」を熱演。
キヨミも家族全員も笑いを取り戻す流れが心地よい。
草々の背中には、おじいちゃんの写真。

「おかしな人間が一生懸命に生きてる姿はほんまにおもろい。
落語と同じや」
キヨミたちが笑ったのは、落語そのものよりも
草々の一生懸命な姿を見たからではないかな。
小草若との対比が巧みな演出。

再びカセットテープの登場。

切れたテープを繋ぎ合わせる。これは塗箸や落語の流れと同じ。
切れたままでは、このドラマもここで途切れていた。(笑)

こうして、おじいちゃんと草若師匠、キヨミと草々が一本の線で
繋がったのだ。さらに、もう一人の人物にもいずれ・・・

そろそろ、この辺で中締め

第5週のMNPは草々。小浜への登場と鯖の食べっぷりが豪快。
め以子でもかなわない恐竜モドキ。
助演手先賞は正平。テープを繋ぎ合わせた功労者。
助演食材賞は、とぐろを巻いた玉ねぎ。形がナイス。
一つでも大切にしようね、お母ちゃん。

助演ギョロ目賞は小草若。ギョギョッ!鯖の目?
そして、助演ちゃっかり賞は、五木ひろしのサイン色紙を
手に入れた順子。魚屋食堂に飾られるのは間違いない。

これで、全編の序盤はおしまい。
次回から骨肉の争い?とは一味違う、
落伍者?の群像劇がスタート。

それでは、また。
 

 

妄想の彼方

キヨミの妄想にも変化が起きているようだ。
ネガティブというより自虐的な妄想に溢れていたのが、
自分に都合のいい妄想もするようになってきた。

たとえば
  「キヨミって呼んでください」と草々を見つめる。
  友春と結婚してすぐに未亡人。そして悠々自適な生活。
しかし、そこにあるのは大きな落とし穴。

草々はキヨミ(B子)の名前に全く無関心。
逆にA子のことをキヨミちゃんと呼ぶことが、
自分の胸に刺さってくる。
さらに、落語「次の御用日」が追い討ちに。

キヨミは感情も想像力も豊かで傷つきやすいのだ。
ところが、友春の結婚妄想では、感情が抜け落ちてしまう。
このちぐはぐさが可愛らしく、守ってあげたいと周りが
思うんだろうな。

これは、キヨミのもって生まれてきた才能なのかもしれない。

A子には(今のところ)それがない。
もう一つA子にないのは、順子のような親友。
A子がB子に重要な進路を相談した真意をB子は分かっていない。
失恋モードではタイミングが悪すぎる。

この見事なすれ違いをタイミングよく仕掛けるシナリオ・・・

なかなか交わらないAとBの関係は少しずつ位置を変えながら回転し、
終盤までもつれていく。(誰にも両面あるんだよね)

第三者的存在の順子(C子)も同じ位置にずっといるわけじゃない。
順子が当事者として前面に出てくるとき、一体何が起こるのか。
初見なら、今からは
まったく想像できないだろう。お楽しみに。

ところで、糸子の珍語録にはカタカナ混じりが多い。
  ボブスレー サバンナ ビーム ・・・
キヨミ「おかあちゃん、サバンナって鯖に掛けてんの」
糸子「そうや。麗しのサバやで」
キヨミ「そ、それって、もしかしてムー・ビー?」

そして、妄想の尽きた彼方から、颯爽と草々がやってきた。
焼鯖を食べに。→め以子(ごちそうさん

それでは、また。

 

ラビリンス

一か月ほど前、「ちりとてちん」の某感想欄に
こんなことを書いていた。


とうとう、朝ドラ史上最笑のお母ちゃんが
戻ってきました。
おかえりやす。
この作品、タイトルバックは物語の絵巻物。
ファーストシーン、最初の台詞などが、
全体の伏線になっていました。
そして、タイトル自体がダブルミーニング
小ネタと思えたものも、大ネタに化けていきます。
まさに、伏線のラビリンス。
伏魔殿ではありませんので、ご安心を。
今は、若狭塗箸で焼鯖を食べてみたい気分。
へしこ?
それは・・・しばらく考えさせてください。(笑)


そう。「伏線のラビリンス」と言ったのはコイツ。→ぴぼなっち

しばらく考えた結論。やはり「へしこ」を食べてみたいな。(笑)
あの「創作」デザートもラビリンスの一つで、後半に威力発揮。

初回から見直していて、大事なことを書き忘れていたことに気づいた。

第1週のMVP。それは、チビキヨミと正太郎さん。
キヨミとおじいさんの出会いは落語との出会いでもある。
あのカセットテープは、ラビリンスの中で燦然と輝く宝石。
終盤まで、このドラマを牽引していく。

前に、糸子のエプロンについて書いたことがあるが、
キヨミのエプロン姿らしきものを発見。
第24回「キヨミって呼んでください」の妄想シーン。
ピンクの衣装と瞳がモエモエ。メイドカフェかよ・・・(笑)

いやいや、これもラビリンスの一部かな?

キヨミのヒトミに完敗!

それでは、また。

 

ポニーテールのチャップリン

草々の髪の毛は相変わらずだが、キヨミはツインテールから
ポニーテールに変わっている。

心境の変化があったのか、目標が一つになったことを暗示しているのか
などと先読みすると、このドラマはつまらなくなる。
「二重らせん」はゆっくりと、しかし切れ目なしに動いていく。
だから、その時々を楽しみたい。

懇親会での落語「辻占茶屋」は、全編の中でも一番爆笑する場面。
こんな脚本を書いた作者は天才ではないか・・・

しかし、本当の天才は貫地谷しほりだ、と最近思うようになっている。
目が凍りついたように丸くなり小柄な体が強張る。(ロボットフリーズ)

そして(実際上も)上手くはない三味線を弾きながら、
「ふるさと」をトツトツと歌う。
舞い上がっていて、草々の怪訝そうな顔を見るまで気がつかない。
愕然。どねぇしょう。怯え。土下座。褒められて呆然。
畳にへたり込む。胸がいたい。恋に落ちる。

密度が高すぎて、とても一度では消化できない。

この場面を初めて見たとき思ったのは、
「あっ、チャップリンがいる」。
今あらためてみると、チャップリンより自然体である。
そのうえ、かわいい。(笑)演じた当時は、22歳かな。

草々との間合いも見事で、同じ演技を二度とみることが
できないほどの絶妙の呼吸。
特別なカメラワーク、凝った編集をしていないところが、
かえってよい効果を引き出している。

チャップリンを引き合いに出したのは、
「辻占茶屋」のためだけではない。
大阪編初期のキヨミの動作は、チャップリンのパントマイム
とそっくり。
もちろん、チャップリンが真似をしたのではなく、
キヨミ→演出陣が真似をしたのだ。(オマージュと言うらしい)

いずれ、キヨミの「チャップリンフェイス」そのまんまが
出てくるのだろう。

そういうことで、第4週のMVPは、キー公ことキヨミ。
また、助言ツケ回し賞は、草若師匠。
さらに、助演伏線賞は、「座布団」の大盤振る舞い。

キヨミ「私がついています」
草々「・・・」
それにも、座布団一枚。

これは大喜利ではありません。ドラマです。(注)

ところで、コイには登竜門という滝を登る鯉の意味もある
ということをツイッターで知った。
なるほど。寝床の店前の鯉は唐突ではないんだなあ。
本当によくできている脚本。

ラストにA子登場。天才の前に天災が現れた。
B子は、登竜門から地獄門にワープしてしまうのか。
ここから底抜けに、AとBの「二重らせん」が動き出す予兆。

それでは、また。